先日こんなメールを頂きました。
こんにちは。
土曜朝のさわやかな天気の中、ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいた所にfb経由で記事がまわってきまして、これは是非トピシュさんにご連絡せねば、とメールいたしました。
妻の願いは「ブランド品より夫の19時帰宅」 | 進化するニッポンの夫婦 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
ご説明は不要かと思いますが、親子全員実名写真つきです。年収など生々しい記載にモヤモヤしながら読み進めた所、○○○を匂わせる内容に行き当たり、ほっこりしました。
ダメな夫をうまくコントロールする妻、というように読めますが、記事全体から2人の虚栄心の高さを感じてしまうのは私だけでしょうか。
私自身はこの記事自体釣りなのでは、とも少し思っています。是非判定いただけるとありがたいです。
注:○○○はtopisyuによる伏せ字
これに対しtopisyuからは釣りではないと思いますとお伝えしたところ、それではということで、モヤモヤ解説をすることになりました。例のごとく、元記事にモヤモヤした人だけ読んで下さい。
なお、最近結構依頼メールを頂いていて、どのような人がこのブログの読者なのか朧気ながら見えてきたところがあります。メールを下さった方、皆さんありがとうございます。
※記事の取材で使用されたカメラ。アフィリエイトではありません。
この記事のモヤモヤポイント
この記事はこの依頼で紹介して頂き知ったのですが、最初に読んだ感想としては、夫婦共働き、夫婦間の育児・家事の分担について過渡期にある日本において、このような成功体験が多く共有されることにこしたことはないというものでした。Facebookではいいね!が1万以上もついていることですから、さぞたくさんシェアされたことだと思います。影響力も凄い。
ただ、今回依頼メールを書かれた方のようにモヤモヤする方が少なからずいるのも想像はできました。ポイントは、ざっくりいうと以下の2点に集約されると思います。
- 完璧な家族として演出されすぎていること
- 成功体験としては特殊ケースすぎること
それぞれ説明します。
完璧な家族として演出されすぎていること
これは分かりやすいと思います。まず、写真がトップにあり、実名が明らかにされた上で、
美男美女のカップル。女性誌だったら「イケダン」(=イケてる旦那)のページに登場しそうだ。夫は生後3カ月の娘を自然にあやし「外の席は喫煙だから、中の席がいいよ」と取材場所選びまで配慮してくれた。
こういった説明文があります。"美男美女"は確かに事実だったとして本文中に書く必要はあるのか。"自然にあやし"とあるが、逆に不自然にあやすなんてことは書くことはあるのか。そして、極めつけの、"配慮してくれた"。
配慮をするのは、本来は取材陣です。ここは、"我々が配慮が足らないところをフォローしてくれた""配慮していた"なら分かりますが、"配慮してくれた"として、夫を持ち上げる材料に使う。
その上で、掲載された写真が撮影がされた場所は、取材場所ではなく公園。背景には桜が写り込む。
服装からも取材が行われたのは、この記事が掲載された7月ではなく、4月の春先でしょうから、桜が写り込むのは変なことではないです。
また、実際のエピソードでは色々ご苦労されているので、完璧に見えても完璧には行かないんだなということを読者に捉えさせたいという意図があるとは思います。
ただ、子供も顔付き・実名で掲載した上で、良い家族感が演出されすぎていると、妻が夫の過去を評している通り、
「トロフィーチャイルド期。子どもは自分をカッコよく見せるための飾りみたいな感じでしたね……」
この記事自体も、ご夫婦にとってトロフィーになっているように見えてしまう部分があると思います。(実際はそうではないのでしょうが。)
成功体験としては特殊ケースすぎること
もう一つのモヤモヤポイントは、特殊過ぎて参考にならないというところでしょうか。簡単に列挙すると、
- 夫は名門お受験塾に通った末、幼稚舎から大学まで慶応。5歳までは海外でナニーのいる生活
- 夫婦の職場が同じで、妻が夫のプレゼンをアドバイス
- 夫はイクメンフェスティバルで準優勝
- 夫は転職後営業成績トップなので会議の時間を変更できた
こんなところです。繰り返しですが、このご家族ならではの苦労があったこと、特に妻側の努力が凄いものがあったのはよく分かるように書いてあります。
ただ、列挙しているポイントにより「元々夫ができる人だっただけでは?」というように読める要素が多めになってしまっています。下手をすると、共働きの家事育児の分担が(システムの問題点の指摘ではなく)個人の努力論に展開してしまう。
ここは気になる人はいると思います。
その他のモヤモヤ
上記の2点以外でも細かな気になるところはあります。
実際に本当に上手くいっているのかというと、夫は、
ほぼ毎日19時か20時に帰宅し、息子と娘をお風呂に入れる。
と言っているのに、妻の望みは、
望みは、5年前と変わらず今もシンプルだ。「週3回、パパに子どもをお風呂に入れてほしいです」
ということで、実はまだ途上なのかもしれない(のに上手く行っている成功体験記事になっているかもしれないこと)とか、夫が妻の言うことを聞くようになったプロセスに、
第1子が生まれた後も飲み会に行き続けていた頃、ひとつ、決してやってはいけないことをしてしまった。それを「妻は許してはいないと思うけれど、離婚はせずにいてくれた」。そのことがきっかけで「これまでの自分の考え方はダメだと思った。妻の信頼を取り戻すためにどうしたらいいか、真剣に考えるようになりました」。
これがあることとかでしょうか。夫の過失があってそれを梃に妻が夫を教育したという流れになっている。これも、特殊ケースの要素と言ってもいいかも。
ということで、モヤモヤ解説は、以上です。以下は、簡単な補足。
補足
記事が演出過剰ではないかという点については、東洋経済オンラインについては以下の記事でも紹介した通り、前編集長がプロレス的エンタメを目指しているという話がありましたので、その路線が継続しているからかもしれません。
釣り記事解説"おやつカンパニー、過半の役員が辞めていた!" - 斗比主閲子の姑日記
副題の"幼稚舎から慶応…"お坊ちゃん育ち"の夫が激変!"はAERAっぽい煽り方。
また、この記事が釣りではないとした理由は、妻の女性が2011年にもインタビューを受けられているからです。一応書いてある内容は今回と一致していますので。
大手企業の一般職から、ベンチャー企業の総合職へ転職 | 「マイナビウーマン」
なお、こちらの記事を読むと、どうして二人が結婚に至ったのか、結婚を期に女性が退職したこと(専業主婦時代は"野菜ソムリエやフードアナリスト、マクロビオティックに関する資格を取得")、当時1歳のご長男は以前から顔出ししていたこと、女性は"何でも親がやってあげたりするのではなく、幼いころから子ども自身に選択させ、考えさせ"ようとしていたこと、例の夫である男性の"やってはいけないこと"が起こした前後の一日のスケジュールが紹介されているなと、東洋経済の記事の補足になっています。
このご夫婦がどういう歩みをしてきたかをもっと知りたい人は、こちらも読まれるといいかもしれません。