こんな記事がありました。
ベビーカーマーク「若い母親甘やかし過ぎ」と年配女性が苦情│NEWSポストセブン
国土交通省が「ベビーカーマーク」を公表し、電車やバスの中でベビーカーを折り畳まなくてもよいとしたことに、一部で反発の声があがっている。こうしたベビーカーに対する“批判の急先鋒”になっているのは、実は先輩ママ、つまり中高年のおばさんたちである。
週刊ポストらしい、対立を煽る書き方だと思ったら、はてなブックマークコメントでも同様の指摘がありました。
はてなブックマーク - ベビーカーマーク「若い母親甘やかし過ぎ」と年配女性が苦情│NEWSポストセブン
では、本当は、こんな対立というか、世代間での意識の違いがないのかといえば、あるんじゃないかという、ベビーカー協議会で提出された調査を紹介するのがこの記事の目的です。お好きな人だけどうぞ。
週刊ポストが煽っているのは女対女だけではない
いきなり脱線しますが、冒頭に紹介した週刊ポストの記事だけ読むと、女の敵は女問題に仕立てあげるように見えますが、週刊ポストがしているのはそれだけじゃないんですよね。
国交省が「ベビーカーマーク」制度化した背景に増加する苦情│NEWSポストセブン
昨年、国交省が鉄道会社に行なった調査では、乗客から「ベビーカーは混んだ列車への乗車を控えて欲しい」という要望が寄せられたと回答した会社が、54.5%に上った。「迷惑」と考える人たちがよく指摘するのが、乗降口や優先座席を“占拠”するママ友集団への不満だ。
「2~3人のベビーカーママ友が乗り込んできたら悲惨。優先座席を占拠してスマホでメール、手鏡で化粧に夢中で、他の乗客がベビーカーに邪魔されて降りにくそうにしても知らん顔。優先席には確かに子連れ女性のマークがあるが、あれは抱っこしているイラストだ。現状ですらこんな状態なのに、マークで“お墨付き”をつけられると、どんな事態が起きるのか考えただけで怖い」(50代男性)
「せめて改札に近い一番混む乗降口は避ければいいのに、楽だからかそこにいる。駆け込み乗車してくる客がベビーカーにぶつかりそうになったのを何度も見た。駆け込みする乗客のほうが悪いのだろうが、万が一の事故を防ぐ意味で、母親も考えればいいのにとも思う」(40代男性)
続いて多かったのが、荷物置きと化したベビーカーが、周囲の乗客をヒヤヒヤさせているケース。
「ベビーカーの持ち手にフックを懸けて、そこには高級ブランドの巨大な買い物袋がどっさり。子供を座らせている座席にも買い物袋がある。明らかに不安定で、いまに子供ごとバターンと倒れてしまわないかとゾッとする」(60代男性)
「荷物を積んだ状態で、車内に強引に突っ込んでくる。車輪で足を引かれたこともある。小さな子がいるから注意しづらい」(70代男性)
この4/4に公開された記事では40代~70代の男性しか登場しないという見事な偏りっぷりです。ベビーカーを利用する親対男性一般という構図も作っています。
週刊ポストの想定読者は、中年以降の男女ですから、想定読者層の溜飲を下げようとすると、冒頭の記事やこの記事のように、若年層VS中年層という形になってしまいがちなんだと思います。
余談でした。
ベビーカー利用については昨年から協議会が開かれていました
ベビーカー議論が再び盛り上がってきているのは、先月26日にベビーカーを畳まないで電車やバスに乗車することができるといったポスターやベビーカーマークを国交省が公表してからです。
ベビーカーたたまず乗車OK 公共交通機関でルール化:朝日新聞デジタル
この公表に向けて、どんな議論が行われたのか、国交省主催のベビーカー協議会(正式名称は、公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会)の資料を漁っていたところ、興味深い調査が公開されていました。
それは、第一回の協議会で提示されたもので、『資料4(公共交通機関におけるベビーカー利用について)』(PDF)というものです
調査内容は世代間ギャップが明確に出ているもの
調査は、質問票の送付と街中でのiPadアンケートで合計320人ぐらいの人に対して行われたものです。抜粋して紹介していきます。
まず、ベビーカーの利用経験。
子育て経験がない人は予想通りの結果ですが、子育て経験があっても末子の年齢が上がれば上がるほど経験者数が減っています。
次に利用の是非について。
ここでも、ベビーカーを利用して外出することについて積極的に肯定する回答は末子の年齢が上がるほど減っています。
ベビーカー利用者に対する不満では、
末子の年齢が20歳以上の人の結果が他と違う。不満がある人は多く、そもそも、意識して見たことがないという人も多い。
不満の内容も興味深い違いが出ていて、
出入口付近や車両間扉付近でのベビーカーに、より不満を抱いている。要は手摺りや優先席付近ということですよね。高齢者と現役子持ちが競合してる構図が見えてきます。
続いて、ベビーカー利用者が周囲に気遣いがあるかどうか。
これも、分かりやすく、あると思う人が末子の年齢が上がれば上がるほど減っていく。
本題である、ベビーカーを折りたたまないで乗車するかについては、
高齢子持ちの反対の多さ。子育て経験なしのほうが賛成が多い。
まとめのページでも、
子育て経験者の中でギャップがあることが書かれています。
世代間ギャップを生む背景
こういったギャップがあることを確認しているため、国交省は今回ベビーカーマークやベビーカーの利用に対するポスターを公布することで、ギャップを解消しようとしているんですよね。
そもそも、なぜこのギャップが生まれているかといえば、電車でのベビーカー利用者が増えたというのがあると思います。ベビーカー協議会での資料にもちょくちょく出てくるのですが、特にバリアフリーが進展したことが大きい。
エスカレーターはベビーカーは乗れませんし、折りたたんで階段を下りるのは大変なので、その場所にエレベーターがあるかどうかは、ベビーカー利用者としては重要なチェックポイントです。よく使う駅のエレベーターの位置であれば頭に入れておいて、その付近の車両に乗るということをされている人も多いはず。
バリアフリーを進める、交通バリアフリー法が施行したのは2000年、それを承継した新バリアフリー法が施行したのは2006年です。バリアフリーはここ10数年で一気に充実していっています。
先紹介した調査で登場した末子が20歳以上の親というのは、まだまだバリアフリーになっていなかったため、その世代が子育て全盛期の頃は、電車でベビーカーを利用するのはそれほど一般的ではなかったんですよね。自分の経験では、抱っこひもで何とかしていた。今のベビーカー利用の状況は想像がついていない人がいる。
加えて、更に高齢者となると、優先席やエレベーターの利用がベビーカー利用世代と完全にバッティングするわけです。先ほどの調査でもそれが分かる。バリアフリー化によって、その恩恵を受ける層が競合したわけです。
締め
ベビーカー論争では、二つの切り口があります。一つは現役会社員による、満員電車や通勤電車でのベビーカーに利用に対する不満。もう一つが今回紹介した親世代による、利用経験のギャップや競合からくる不満。週刊ポストの記事でもこの二つが分かれていました。
それぞれ不満の原因や解決方法が異なるため、ベビーカー論争というのは燃えやすく、議論が混沌とする傾向があるんですよね。
最後に恒例の発言小町のトピを紹介しておきます。地獄ですよ。
ベビーカーが迷惑です。 : 家族・友人・人間関係 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
電車でベビーカーは畳むべきという人に質問 : 生活・身近な話題 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ベビーカーで電車に乗ること : 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)