斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

自分の殻・親・守られるヒロイン像から解放された『アナと雪の女王』

先週末、子供と観てきました。ネタバレ要素がありますので、ご注意下さい。

アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック -デラックス・エディション- (2枚組ALBUM)

※画像用にAmazonから。アフィリエイトではありません。

 

アナ雪に関する自分の事前知識

※公式サイトのURLがanayukiとなっており、毎回全部書くのも面倒なので、呼称はアナ雪と略して書きます。

まず、事前知識として、この作品は、ディズニーの長編アニメ映画であり、ヒロインがヒーローを必要としない物語であるということは知っていました。(はてなブックマーク上でホットエントリーしていた記事があったため。記事の中身は読んでいません。)後は、歌が流行っていることも知っていました。

ちなみに、ディズニーの長編アニメ映画は『シュガー・ラッシュ』以外、古いもの含めて観たことはありませんでした。ディズニーは正統派っぽい話が多そうだと敬遠していましたが、アウトローが主人公の『シュガー・ラッシュ』がかなり良かったので、アナ雪を観てもいいなと思ったわけです。なお、2006年位ディズニーに買収されたピクサーの方はほぼ観ています。『WALL・E/ウォーリー』が一番好きです。

話が逸れました。人間関係、ストーリーは事前知識なしです。事前知識があるとつまらないと考えていて、観に行く予定の映画は、面白そうという情報以外は仕入れないようにしています。

また、このレビューは、他の人のレビューを一切見ていないで書いています。重複しているかもしれません。ご勘弁を。

 

アナ雪の概要

まだ観ていないけれど、ストーリーを知ってからレビューを読みたい方は、映画の公式サイトを見ることをお勧めします。Wikipediaは最後まで完全にストーリーが書かれていますので注意してください。

ストーリー | 作品情報 | アナと雪の女王

ざっくり紹介すると、『ある国の女王エルサは生まれつき触れるものを凍らす能力を持っていたものそれを制御できず、女王としての正式な戴冠式の日にその力が暴走してしまい、国中を雪と氷で埋め尽くしてしまう。山中に引きこもったエルサを、女王の妹であるアナが迎えに行く』という話です。エルサとアナが両方ともヒロインです。ダブルヒロイン。ヒーロー役としては、戴冠式の日にアナと出会ってその日に結婚を誓うハンス王子と、アナをエルサの下へと案内する山暮らしのクリストフの二人がいます。ただ、二人ともそんなに活躍しません。

英語のタイトルは『Frozen』です。ダブルヒロインものであることをはっきりさせるという意味では邦題の方がいいかもしれません。

 

長くなりましたが、ここからがレビューです。

 

障碍や病気のメタファーとしてのエルサの能力

エルサは家族の中で一人だけ触れるものを凍らす特殊能力を持っているわけですね。この特殊能力によってエルサは幼少期にアナを傷つけてしまったため、エルサは能力を制御するまで家から出ることを、両親である国王・女王から許されませんでした。(本人も納得している感じ。)戴冠式までの数年間、アナも含めて誰とも接触せず、能力を制御しようとするも、結局制御できず、暴走してしまうわけです。そして、周りからは化け物扱い。

topisyuは、アナという普通の女の子が悪い雪の女王と戦うストーリーかと勝手に考えていたので、思っていたのと違う展開だったわけですが、寓話に出てくる特殊能力というのは、現実世界の障碍や病気のメタファーですから、この特殊能力が周りから認められるという話になるんだろうなーと思って見ていました。

こういう展開の話で、ぱっと思い浮かぶのは、ハリー・ポッターシリーズやパーシー・ジャクソンシリーズでしょうか。ハリー・ポッターは現実世界では親戚のうち?でいじめられていて、パーシー・ジャクソンはADHDと難読症で周りに馴染めない。

ハリー・ポッターの最初の二作の監督であるクリス・コロンバスは娘が難読症で、パーシー・ジャクソンの原作者のリック・ライアダンの息子も難読症なんですよね。リック・ライアダンは確かその息子にせがまれパーシー・ジャクソンシリーズを書いたらしい。

特殊能力で苦しむエルサが、親の庇護(縛り、ルール)から離れ、自分らしく生きることを知り、周りに心を開いて、最後にその能力込みで認められるという話になることで、障碍や病気を持って生きることを肯定することになるわけですね。

価値観の多様性がうたわれる現代ですから、誰もが何らかの点でマイノリティになることはありえて、そういう意味で、マイノリティを取り扱った作品の方が今は共感を呼びやすいんじゃないかなと考えていました。

 

ヒーローが守ることを許さないヒロイン

エルサは自分が化け物扱いされて山に隠れるわけですが、その後雪山では、とても美しい自分だけの城を作り、髪型も服装も好きに変えます。アナがハンス王子と会ったその日に結婚しようとするはっちゃけを見て、自分もはっちゃけてしまったんでしょうが、なかなかフリーダムです。雪山で歌う曲の歌詞に、「親にとって理想の娘はいない」というのが出てくるので、山暮らしは親からの解放を意味しています。どうでもいいですが、雪山で歌うのは雪崩起こしそうでヒヤヒヤして見守っていました。 

アナについては説明不要ですよね。一般的な童話のヒロインから、現代的なヒロインに設定されていました。アナにとっては男はアシスト役というのが徹底的に描かれています。山に姉を助けに行くのはアナで、内政をするのがハンス王子というのが特に。桃太郎のおじいさんとおばあさんが逆みたいな感じと言えば分かりやすいでしょうか。

二人ともほぼ引きこもり状態で外界と接触がなかったのに、エルサが美しい城を作られるデザインセンスをどこで磨いたのかとか、どうしてアナはいきなり馬に乗れるのかとか、努力や才能に関する説明はすっ飛ばして、ヒーローから守られないヒロインが描かれています。

 

その他思ったこと

この二つがこの映画のポイントでしょうか。後は、細かな気付いたことをトメトメしく書いてみます。

・アナがエルサを迎えに行くために乗るハンス王子の持ち馬(たぶん)は途中アクシデントがあって逃げ出します。一方で、クリストフの持ち?トナカイであるスヴェンは最後まで投げ出さないで、アンの身を案じる。(アンだけに。)持ち主の影響を受けているんでしょうが、この対比は二人のヒーローの立ち位置を表していそう。

・雪だるまのオラフは、エルサとアナを結びつける役割が設定されています。これはヒーローを活躍させないという役割もありそう。

・ウェーゼルトン(悪い貿易商の爺さん)との取引を簡単にやめちゃうのは、その取引によって生計を立てている人間からするとたまったもんじゃないでしょうね。現実でやったら確実に炎上する。

・エルサはいくらでも氷を作れるのに、クリストフをお抱え氷配達人にするのは、周りからアナのヒモと言われてもしょうがないでしょうね。

以上です。

 

締め

テーマがはっきりしているのでそれを楽しめる人はいいでしょうね。ストーリーがそんなに複雑でもないからか、子供も喜んで見てくれていました。自分は『シュガー・ラッシュ』の方が話が複雑で好きですね。いたずらっ子の可愛いヒロインは、アナの子供時代とそっくり(声優さんがどちらも諸星すみれさん)。未見の人にはお勧めします。