斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

リクルートの「赤すぐ」記事の小火・一部削除・謝罪から見る、Webで育児記事を編集することの難しさ

Twitterを見てたら、 

電子書籍の編集をしていただいたid:steinさんがまたモヤモヤされていたので、該当記事を読みに行ったら、見事に炎上要素を含んだものでした。

 

燃えどころ 

内容をざっくり紹介すると、こんな感じです。

あるイクメンが、妻の外出中に、子どものオムツ替えをした後でオムツを捨てようとしたら、ちょっと目を離した隙にベビーベッドから子どもが落下してしまった。子どもは泣きわめくものの、妻が戻ってきたタイミングでは泣き止んでいて、妻にこの大事件を気付かれずにすんで良かった。イクメンのみんな、ベビーベッドの柵は面倒でも上げておこう!

※"あるイクメン"というのはこの著者がイクメンを自称しているため、このように表記しました。

まあ、何が燃えるかといえば、「教訓がそれか!」というところですよね。

ベビーベッドの柵を上げるのももちろん大事だけど(というか基本だけれど)、そんなことより、子どもに何かあったということを夫婦間でシェアするというのが大切で。こういう基本の動作ができないなら、不信感を買います。イクメンをご自身が自称しているだけに、これはヤバい。燃える。

 

Twitterで小火に

Twitterでも同様の指摘をしたTweetがありました。

RTもかなりされているため、同じ感想を抱いた人は多くいたようです。ちょっと小火った感じでしょうか。はてなブックマークでも同様にネガティブな反応でした。

はてなブックマーク - 背後から鈍い音、続いて泣き声!…妻には知られちゃならない落下事故 - 赤すぐnet 妊娠・出産・育児 みんなの体験記

 

編集部による謝罪文の追記

その後、一日経ってから記事を見に行ってみたら、こんなコメントが追記されていて、タイトルと記事内容が一部変更・削除されていました。Twitterやはてなブックマークでの反応を見て、編集部として対応したということなのでしょう。

※編集部注
貴重なご意見を頂戴し、一部内容を削除いたしました。読者の皆様を不安にさせる表現があったことをお詫び申し上げます。今後このようなことのないよう、記事内容の確認を徹底してまいります。
引き続き「赤すぐみんなの体験記」をよろしくお願いいたします。

ただ、削除された箇所と残された箇所を比較してみると、これがなかなか微妙なものでした。

 

"読者の皆様を不安にさせる表現"を削除

削除された部分とは以下の赤い枠で囲まれた部分です。 

f:id:topisyu:20160405001948p:plain

ここと、

f:id:topisyu:20160405014842p:plain

この部分です。一部削除前の記事については、誰かがWeb魚拓サービスで取得していたため残っていました。

背後から鈍い音、続いて泣き声!…妻には知られちゃならない落下事故 - 赤すぐnet 妊娠・出産・育児 みんなの体験記(リンク先はarchive.is)

そしてタイトルは、

『背後から鈍い音、続いて泣き声!…妻には知られちゃならない落下事故』

から、

『背後から鈍い音、続いて泣き声!…無事でよかったけど肝を冷やした落下事故』

に変わっています。

これから分かるように、赤すぐの編集部が関わって削除したのは、元記事における「イクメン夫が妻に子どもが落ちたことを報告しなかった」という事実です。これが、編集部としての"読者の皆様を不安にさせる表現"ということなのでしょう。

 

不安を隠せば不安はなくなるという発想?

この赤すぐ編集部の対応は極端に言ってしまえば、元記事のイクメンさんと変わらないように見えますよね。

元記事のイクメンさんは子どもに事故があったけれど、その事故が妻にバレなければいいと考えた。そして、赤すぐ編集部も、その不安にさせる表現さえなければいいと、該当箇所だけを削除した。何かあってもバレなければいいという発想が共通しているように見える。 

夫婦間で子どもに関して何か心配事があったらシェアする必要性に比べたら、編集部と読者の間でそういうものをシェアする必要性はそんなに高くないでしょうけど、メディアがこういうことをやると信頼性は損なわれます。妻に隠したことが批判されている中で、隠したことを隠そうとするは、相当不誠実な印象を与えます。

実際、Twitterでもこんな反応があります。

読者は不安になったわけじゃないですよね。

ただ、赤すぐの編集部が臭いものに蓋をするみたいな対応をしたのは隠蔽体質があるかといえば、たぶん、そういうことじゃないんですよね。記録が残りやすいWebでそれは考えにくいし、何より、謝罪文では"不安にさせる表現があったこと"を謝罪している。あくまで表現の問題。赤すぐの編集部は、妻に隠していたことが小火った原因だとは分からず、あくまで表現に不適切なものがあったと考えて、それを削除すればいいと考えたんじゃないかと思います。そして、結果として、問題を隠蔽するような形になっちゃった。

 

締め

ネットでの育児記事は、燃えやすい傾向にあります。これは、育児というのが方法論が必ずしも確立されておらず、しかも苦労が伴うため経験した人の多くが持論を持っているという背景があるからと私は考えています。

育児記事を燃やさないでしかも話題にさせるには、そこかしこに配置された炎上ポイントを回避し続ける必要があるため、書き手にそれなりの力量が必要になります。

今回「赤すぐ」というプロが運営しているブログでの、この小火とその後の削除対応を見ていて、ネットでは育児記事を書くだけではなく、編集することも難しいのだなと思いました。何が燃えた原因か考えて、それに適切に事後処理対応するのは大変ですよね。