斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

たくさんの選択肢を検討するのは疲れるし、決めたものを変えるのも疲れる

北沢かえる(id:kaerudayo)さんのこの記事を読みました。

無用な心配の連続 - 北沢かえるの働けば自由になる日記

簡単に内容を紹介すると、

『北沢さんのお母様が買い物予定の食材を決めたものから変えようとして、それにお父様が疲れて怒るというエピソードを軸に、北沢さんのお子さんもお父様と同じく決まったことが変わると怒ることがあると紹介し、老人に限らず、子供についても、選択肢を検討し直すキャパシティがないということを予め考慮しておくといいのではないか』

というお話です。

この話、確かに年老いた両親や子供のように、もともとキャパシティが大きくない傾向のある年齢層に対して気を付けるといいことだと思いますが、他の年齢層であったり、プライベートに限らず仕事でも意識しておくといいことですよね。

ということで、そもそも選択肢が多いと疲れるし、決めるのも疲れるという話を書きます。

 

多い選択肢から選ぶのは大変

ブレストなんかで、選択肢をたくさん出すのはそれ自体は意味があります。思ってもいないアイデアが抜け落ちてしまうことを防ぐこともあるし、選択肢をたくさん出すことで見えてくるものもありますし。

ただ、その選択肢を受けて決定をする立場になると、選択肢の多さは負担になります。選択肢ごとのリスクとリターンを脳内でシミュレーションすることになりますので。選択肢を提案をしてもらう人には、最低でも、選択肢ごとのPros and Consぐらいはまとめて欲しいところがありますが、それでも選択肢が10も20もある中で、Pros and Consだけを頼りに一つを選択するなんて大変です。

だから、キャパが乏しかったり、忙しい人に対して選択肢を大量に出すのは嫌がらせとなります。嫌がらせをしたくない、好意を持ってもらいたいなら、MECE感は失われないレベルで選択肢を厳選して提示することが大切。捨象した選択肢についてはなぜ抽出しなかったかを簡単に補足するぐらいでOKです。

もちろん、決定者の判断が常に正しいわけでもないので、決定者の了承の下、オプションなんかを用意して、リスクを回避するというのもありです。これは決定者としても気楽になります。

 

決めたものを変えるのも大変

北沢かえるさんも書かれている通り、一度決めた後に変えるのも結構疲れます。

「だ~か~ら、提案をしたら、それを考えなければいけないでしょ。決めるまでに使った労力を無駄にして、また考える。脳を使うのは実は結構なカロリーを消費するんだよ。『考えるだけだからいいでしょ』とか軽く思わないでね」

一度決断しているからもう一度検討するとなると同じプロセスを辿ると考えるだけで脳が思考停止になるんですよね。スイッチングコストが全部見えているわけでもないし。

新しい選択肢を出す方は、自分の中では良いと判断できる選択肢が出たから提案しているだけなので、気楽です。でも、他の人は、良いか悪いかという判断基準がない中で再検討することになります。判断基準というのは、明確に数字になっていればいいけれど、そうでもないと、各人が自分の価値観の中で組み直して出来上がるものなんですよね。

だから、よほど魅力的な選択肢が出ていたり、現状の決断が大きく失敗する可能性が見えているのでもなければ、相手との関係性を考えれば、決めたものを変えさせるような話はしない方がいい。自分が良いと思う選択肢で進めたいなら、相手には労力をかけさせないよう根回し、手回しをすることです。

 

意識的に選択肢を絞る、選ばせる

これを意識して、意図的に選択肢を絞ったり、選ばせて他に移らないようにさせることもありますよね。

例えば、新商品を販売する時に、商品の選定基準を明確にしておいて、消費者の意思決定を楽にさせたり。アンケート用紙である特定の回答に誘導するために選択肢を絞り込んだり多めにしたり。インデックスへの投資が気軽なのも、選択肢を増やさなくていいし、一度決めたら投資し続けるだけというところだったり。(コストやポートフォリオはそれでも検討し直すでしょうが)

本当は中庸もあるのに、白黒はっきりさせちゃうのとかも、決定者は(思考停止して)楽に決められます。

一度決めてしまうと次に移りにくくなるということも色々利用できます。とりあえず無料で使用させておいて後で有料化するというのもありますね。返品受け付けます商法とか、とにかく甲斐甲斐しく振る舞って結婚してしまうとか。

 

悩みがちな人は選択肢の設定の仕方に間違いがあったり

逆に、悩みがちな人というのは、選択肢が多すぎたり、比較検討するための判断基準がないからということも言えたりします。

物事の決め方を切り替えるのは簡単なことじゃないですけど、自分のキャパシティからすれば選択肢は3つが限界だなとか、判断基準がないのだから悩んでも無駄だな(どれを選んでも同じ)なんていう思い切りができれば、悩むことも減るんですが。

悩まない方法としては、脳内のキャパシティに限界があるわけですから、やっぱりホワイトボード(やExcel等)で整理するのをお勧めしますけどね。容量が足りないなら、外部媒体を増設しちゃえばいい。

 

締め

経営の現場では意思決定は難儀で重要なものだという認識がありますけど、日常生活ではそうではないですよね。相手に選択肢の中から決定させるのは大変な労力を強いるものであると考えると、結構な数のディスコミニケーションは減るんじゃないかと思います。