斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

日本マクドナルドが11年ぶりの赤字?「すき家」のゼンショーは創業来初の赤字?月次売上から業績を読み解く

日本マクドナルドは10/7に、ゼンショーは8/6に、それぞれ今期の業績の下方修正を発表しました。

マクドナルド社長「立て直しに向けできること全てやる」 :日本経済新聞

ゼンショーHD、「すき家」一部休業で13億円の最終赤字に :業績ニュース :企業 :マーケット :日本経済新聞

マクドナルドは2003年以来の11年ぶり、ゼンショーは1982年の創業来初の当期純損失を今期計上する見込みだそうです。

マクドナルドもゼンショーも外食産業では大手ですから、その業績には注目が集まります。特に今年は両社について、中国産鶏肉問題と労働問題から様々な報道があり、多くの人が関心を持ったことでしょう。

報道を耳にすると、そういうことがどれだけ各社の業績に影響を与えているか気になる人もいると思います。ただ、財務諸表を読み解いて、各社の業績を検討するのは知識も必要ですし、手間もかかります。興味はあるけど難解な数字を紐解くのは辛いという人向けに、お手軽に各社の業績動向を追うために、月次売上というものがあることを紹介するのがこの記事です。

それ以上でもそれ以下でもありません。プロ向けではありませんから、あしからず。

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photo by usuallyjusta

※彼の原名はRonaldだけど、日本ではDonaldです。

 

小売・外食企業は月次売上を開示しています

上場している小売の会社(ユニクロやパルコなど)や外食の会社(ワタミや日本マクドナルドやゼンショーなど)は、大体月次の売上高を開示しています。金額を開示しているところもありますが、比率表示で、前年同月比でどれくらいかという数字が公表されることが多いです。後は、客数や客単価、既存店、新店みたいな数値も公表されます。

月の数値が公表されていれば、不祥事や事件事故でどのような影響が各社にあったかその数字を見るだけである程度推測することができます。逆に、何も表立ったトラブルがないのに、数値が悪いと、裏で何かが起きているのではないかという予想も立てられます。

 

日本マクドナルドの月次数値を見てみましょう

それでは、試しに日本マクドナルドの月次の状況を見てみましょう。 

Welcome to McDonald's Holdings Japan

2014年度(%表示) 

2014年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
全店売上高 3.3 -8.8 -3.0 -4.0 -3.0 -8.6 -18.0 -25.7 -17.0      
既存店売上高 3.4 -8.7 -2.6 -3.4 -2.4 -8.0 -17.4 -25.1 -16.6      
客数 -5.3 -13.1 -8.3 -6.4 -5.5 -10.7 -9.6 -16.9 -15.6      
客単価 9.2 5.0 6.3 3.2 3.3 3.0 -8.6 -9.8 -1.2      

2013年度(%表示)

2013年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
全店売上高 -15.2 -10.4 -1.7 -1.9 2.1 2.6 -0.8 -0.1 -2.3 -8.8 -9.5 -8.8
既存店売上高 -17.0 -12.1 -3.6 -3.7 0.5 1.0 -2.7 -1.9 -3.4 -9.7 -10.4 -9.0
客数 -8.1 -10.9 5.8 2.7 -3.1 -2.7 -9.5 -9.3 -6.5 -13.9 -14.4 -12.1
客単価 -9.7 -1.4 -8.9 -6.2 3.7 3.8 7.5 8.1 3.3 4.9 4.7 3.5

2012年度(%表示)

2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
全店売上高 3.5 1.1 8.6 -0.8 -8.4 1.5 -1.4 0.1 -1.1 -5.2 -1.6 -7.0
既存店売上高 1.3 -1.2 6.0 -3.6 -11.0 -1.4 -4.1 -2.5 -3.6 -7.2 -3.1 -8.6
客数 6.3 3.4 6.7 -6.4 2.2 4.2 1.6 6.6 1.3 4.6 -2.6 -0.8
客単価 -4.8 -4.5 -0.7 3.0 -12.9 -5.4 -5.6 -8.5 -4.9 -11.3 -0.5 -7.9

中国産鶏肉騒動があった今年の夏ははっきりと前年同月比で-20%程度の売上高になっていることが分かります。今年は1月以外、前年同月比でマイナスですから、本年度の売上が昨年から大きく下がるだろうことは容易に推測できます。

他の指標である客数と客単価も見てみましょう。2013年5月から一貫して、客数は前年比率減少、客単価は前年比率上昇を続けています。ここから、戦略的に多少客離れしても客単価を上げようとしているのではないかというのが見て取れます。

しかし、傾向としては、客数の減少率に比べ、客単価の減少率の方が大きい状態です。従って、掛け算をした時の売上高は当然下がります。中国産鶏肉騒動だけではなく、思ったよりも客数が下がっている(高いお金を出して日本マクドナルドで食べたいという客が減っている)ということになるでしょうか。

平成26年12月期 通期業績予想の修正および特別損失の計上に関するお知らせ

マクドナルドの業績下方修正の発表では、中国産鶏肉問題に関連した修正の理由が書かれていますが、それ以外に、【ご参考】「2014年12月期 通期業績予想に関する記者会見」要旨(抜粋)として、いかに客数、客単価を改善していくかについての施策も触れられています。

月次で追うと、日本マクドナルドの不振は少なくとも2012年の10月頃から見て取れます。この施策によってどう改善されていくかは、今後の月次の数値で確認することができます。 

 

月次数値を競合他社と比較してみる

日本マクドナルドのようにはっきりとしたトラブルがあった以外に、例えば、消費税増税の影響だという理由で売上が減少したと公表する企業が今年は多いと思います。確かに、それの影響はあったかもしれないけど、その会社独特の何かがあったのではないかと疑問になりますよね。

そんな時は、競合他社と比較します。以下のように、個別企業について比較した数値を公表している企業もありますし、

外食大手月次売上速報/フードビジネス総合研究所

業界団体が業界全体の統計を公表してくれたりもしています。

販売統計|日本チェーンストア協会

こういうものを見ると、例えば、日本マクドナルドとゼンショーが本年度いかに苦戦しているかがはっきりと浮き彫りになります。

 

締め

今回紹介したような、今の数値を過去の数値と比較する、競合他社の数値と比較するというのは、比較的簡単にできます。自分の好きなブランドを保有する会社がどんな状況なのか気になる人は調べてみるといいのではないでしょうか。

また、月次の数値に限らず、各社の開示資料は、投資家向けのものではあるものの、投資をしない一般人が見ても、興味深いものは多くあります。

例えば、ゼンショーが先日開示した第三者委員会の報告書などは、(当事者からするとたまったものではないでしょうが)第三者視点で見ると読み物としても一級品です。

「すき家」労働環境改善のための調査報告書受領について | ゼンショー ZENSHO

不祥事があったという時に、報道だけではなく、会社が出している資料を見て色々考えてみるのもいいものだと思います。