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斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

認定こども園は共働き家庭が得をし、主婦家庭が損をする仕組みなのか

Twitterを眺めていたら、id:kobeni_08さんがほっこりと呟やきつつ日経DUALの記事を紹介していました。

ささっと読んでみて「あー、これはモヤモヤする人がいるかも」と思ってコメント欄を見てみたら、Facebookと連携しているコメント欄は結構荒れていて、この記事を書かれた治部れんげさん自身もそのコメントを見て少々荒れていらっしゃるようでした。

治部れんげさんがこの記事を書かれた理由は、子育て世代が対立するのは良くないということを伝えたかったようですが、結果として、一部で対立が生まれてしまったわけです。

対立構造が残ったままではあまりよろしくなかろうと、なぜモヤモヤした人がいたのかを書いてみようというのがこの記事の目的です。

 

 

Facebookコメントの荒れ荒れ、治部れんげさんのTweetの荒れ荒れ

まず、Facebookコメントを一部抜粋し、どれくらい荒れていたかを紹介します。

内容が感情的で、ほとんど納得できない。新聞の投書欄かと思った。

しかしながら、私もここに書き込んでいる方々と同じく、考えが偏っていると感じます。

私にはただこういった状況に陥って人間関係がギクシャクし始めた筆者が片働き家庭のママ友の機嫌取りに書いた記事にしか見えない気がします。

狭い視点で問題を大きくとらえようとすると、この筆者のように感情的な見方しか出来ず、問題の本質を見誤ることになる。

全体を読んでみても、何に怒っているのか理解しにくいし、無理やり問題提起して、火をつけようとしている印象。

コメントのうち大半が記事内容に否定的です。9件しかないですけどね。コメントされた時間はほとんどが11月12日。特に、"ママ友の機嫌取りに書いた記事にしか見えない"というのは強烈です。このコメントを書かれた方は発言小町の熱心な読者ではないかという気がします。

一方、この記事を書かれた治部れんげさんは、11月12日の18時から23時にかけてTwitterで以下の様なtweetをされています。

この一連のtweetについては、

  • ご自身の日経DUALの記事を最初に紹介されていること
  • この期間で治部れんげさんに対してTwitter上で攻撃的にリプライしている人はいないこと(to:rengejibu since:2015-11-12 until:2015-11-13 - Twitter Search
  • 記事を曲解されたと途中のtweetで書かれていること

から、恐らく、Facebookコメントに対する思いの丈を書かれたのだと理解しました。"だけ""理解不能""個人攻撃に脳内変換""曲解""当たり前"と強い言葉を使われているので、かなり憤っていらっしゃることがうかがえます。

この中で、

共働き有利というしくみの問題を指摘され、共働きの自分が批判された、と曲解したのかもしれませんが、私もよく分かりません…

と、どうして、こんな反応が返ってきたのか理解できないと仰っていたので、今回、ちょっと書いてみようと思ったわけです。

 

形式面

まずは、形式面から。

特集名とタイトルが悪い

特集名とタイトルがちょっと攻撃的ですよね。

治部れんげ

治部れんげさん自身がつけたタイトルではないということですが、損得みたいな書き方をしてしまったために短絡的な内容だろうという先入観が持たれてしまうのと、トップ画像に怒れ!という文字が踊っていたのがそれを助長していたのではないかと推測します。

(ただし、治部れんげさんの過去の記事についてはほとんどコメントがないので、このトップ画像の責任にするのは必ずしも正しくない。)

治部れんげさんがtweetで書かれているように、「認定こども園で明らかになった、家庭内育児に経済価値を認めない仕組みの問題」としたほうが冷静な反応が返ってきた可能性はあります。

 

強い感情を表に出せば、強い感情が返ってくる

タイトルで少々短絡的な記事ではないかという先入観を抱かせた上で、記事内容や見出しは少々感情がこもったものでした。

全く考えていない制度であると痛感しました。

しかし、現実は違いました。

認定こども園の制度では、主婦家庭に何も恩恵がない。むしろ、不公平

消費税として集めたお金を、共働き家庭のみに厚く配分するのはおかしい

人は誰かから怒られるとつい反射で怒りたくなるように、感情には返報性があります。感情のこもった文章を書けば、感情的な反応が返ってくるものです。(必ずしも、Facebookコメントは感情的ではないんですけどね。)

以上が、形式的な話です。

 

内容面

次に内容面です。

共働き家庭は認定子ども園で片働き家庭の半分の金銭的負担で済むという一般化

以下の見出しがついた文章ですが、

「単位時間当たりの自己負担額」は、片働き家庭の半分で済む

(中略)

 結果、うちの園では1号と2号の最大金額が共に3万円弱で、ほぼ同額でした。幼稚園のみ利用する(1号)家庭は週20時間程度、共働き家庭(2号)は週40時間と、利用時間が倍も違うので、単位時間当たりの自己負担額は、共働き家庭は片働き家庭の半分で済むことになります。 

これだけ読むと、一般的に、認定こども園では、共働き家庭の時間当たり負担額が片働き家庭の半分で済むと読めます。

この点については、Facebookコメントでも指摘されている通り、

自治体で実際の料金体系が違うことはご存知ですよね?
我が家では幼稚園が大幅値下げで、かつ、小3までの兄弟児がいるとさらに割引き。
逆に共働きは保育料値上げになっていました。月あたり3000円。偏った知識で書かないで下さい。

各自治体でかなり違います。これは、認定こども園の保育料というのは国の徴収基準を参考にして各自治体で決められているからです。(認定こども園に限らず、認可保育園もそうですけど。)

だから、例えば、以下の神戸市のように、幼稚園部分のみ利用する1号では最大が2万円で、

f:id:topisyu:20151114044048p:plain

保育園部分を利用する2号では、3歳以上児で最大3.2万円にされているというケースもあります。同額ではない。

f:id:topisyu:20151114044317p:plain

同じ料金を払っていても、所得割課税額の区分が共働き世帯と片働き世帯では異なっていたりもします。

ですから、簡単に半分云々と一般化しているような見出しを付けると誤解が生まれます。これは見出しの付け方が悪い。

もし、この議論で片働き世帯の負担増の議論をしたいなら、共働き世帯と比較してはいけません。比較するから対立が生まれるのだから、ここでは、片働き世帯の費用負担がどれだけ重くなったかに焦点を絞ったほうがいい。できるだけ多くの自治体でサンプルを取って、片働き世帯で負担増になっているという実態を示すべきです。

 

消費税は広く集められたのだから広く利用されるべきという発想

もう一つは消費税について。

消費税として集めたお金を、共働き家庭のみに厚く配分するのはおかしい

 消費税は親の就労形態を問わず、すべての家庭が払っています。子どもがいる人もいない人も、片働きの人も共働きの人も。そうやって皆から集めたお金を、共働き家庭のみに厚く配分するのは、おかしな話です。「すべての子ども・子育て家庭を対象」にするなら、親の就業形態を問わず、幼稚園児家庭にも同程度の補助をすべきなのに、現実はそうなっていません。

ここでは、お金を集めた方法がすべての家庭なのだから、共働き家庭のみに厚く配分するのはおかしいとしています。

これを言っちゃうと、税の徴収方法でもって資金使途を決めるべきみたいな話になっちゃいます。元々は消費税を増税する時に資金使途を説明していたのがおかしいと言えばおかしいんですが、財源の性質と使途というのは本来は分けて考えるものです。たばこ税で集められたお金は、たばこ絡みで使わないといけないと言われたら、そのおかしさが理解しやすいでしょうか。

消費税増税分については基礎年金の国庫負担や社会保障費にも利用されているということですから、これは子どものいない人のためにも配分されているとも考えられます。これを、共働き家庭のみに厚く配分していると言っちゃうと、共働き世帯を攻撃するための印象操作をしているのではと思われる可能性があります。

仮に本当に共働き世帯に手厚く配分していたとしても、

こども園、保育園の現在の制度はさほど悪いものでは無いと思います。財源は本当に困っている人に行き渡れば良く、皆に平等に行き渡らせるものではないと思います。

税の使い方は、何かに傾斜することはあるもので、平等が正しいわけではないというのは、Facebookコメントで指摘されています。色々議論はあるでしょうが、どこの国でも農家には多額の補助金が支払われています。これが不平等なのかどうか。

本当に不平等であるということを主張したければ、もう少し、消費税増税分の支出の内訳について確認し、それぞれの使途がどの層に平等で、どの層に不平等かを整理した方がいいですね。それをやると地獄の蓋が空くと思いますが……。

 

認定子ども園では預かり保育ができない?

次に預かり保育について。

こども園制度は、専業主婦の職場復帰を支援しない

(中略)

幼稚園ママは保育園ママと比べて、家事も育児も一人で担うことが多いので、ハードルはさらに高くなります。現実的には家のことを全部やりながら働きに出ようと思ったら、週1~2回のパートから始めることになります。

幼稚園に預かり保育がついていると、こういうママ達も緩やかに仕事をスタートできます。実際、私もそういう例を身近に見てきました。一方、こども園になってしまうと、「専業主婦=1号」「(フルタイムに近い形で)働く母=2号」と分断線が引かれてしまい、前者が仕事を始める際のハードルが高くなってしまうのです。

これをそのまま読むと、幼稚園であった預かり保育が、認定こども園だと、専業主婦の1号と区切られることで分断されて、使いにくくなっているような印象を受けます。だから、認定こども園は専業主婦の職場復帰は支援していないと。

実際には、認定子ども園でも預かり保育は一時預かりと言葉を変えて存続している自治体の方が多いと思います。

子ども・子育て支援新制度について/橋本市ホームページ

Q:幼稚園の預かり保育は、今後も利用できますか?
A:幼稚園の預かり保育は、新制度では「一時預かり」として、これまでと同じように利用できます。

もし、ここで本当に、認定こども園が専業主婦の職場復帰を支援していないと言いたいなら、

  • 認定こども園での一時預かりは、幼稚園の預かり保育より使いにくい
  • 多くの自治体で一時預かりは存在していない

ということをちゃんと調べて説明した方がいいです。

 

消費税増税時のポスターで政府は世論操作をしていた?

次に消費税増税の財源と使途について。

共働き家庭と片働き家庭が争うのは、戦略的に間違っている

(中略)

 消費税が8%に上がったとき、政府のうたい文句は「全額社会保障に使われます」でした。当時、よく見たポスターの写真には、赤ちゃんを抱いた人が笑顔で写っており、増税は子育て支援のため、という印象を受けました。

 ところが実状を見ると、社会保障4経費の中身はほとんど高齢者向けです。年金11.7兆円、医療11.2兆円、介護2.8兆円、そして子ども・子育て支援2.0兆円。これを知ったとき、「あのポスターは世論操作だったんだな」と思いました。日本の国家予算の大半が高齢者のために使われている事実から目をそらしたかったのでしょう。

まずポスターについては、こういうものもありました。

f:id:topisyu:20151114053433p:plain

※画像は、社会保障と税の一体改革-「社会保障と税の一体改革」政府広報一覧 ポスター(平成25年度アーカイブ):政府広報オンラインより

後は、こんなCMも流されていました。

社会保障と税の一体改革-「社会保障と税の一体改革」政府広報一覧 スポットCM(平成25年度アーカイブ):政府広報オンライン

これを見ると、増税は子育て支援のためだけとは見えません。

もし、政府が世論操作をしようとしていたのだと主張したいなら、例えば、子育て支援のためだけと取られるポスターがどれくらい張られていたかなど、できるだけ客観的に説明した方がいいです。そうじゃないと、議論のベースができない。

 

それと、

ところが実状を見ると、社会保障4経費の中身はほとんど高齢者向けです。年金11.7兆円、医療11.2兆円、介護2.8兆円、そして子ども・子育て支援2.0兆円。……日本の国家予算の大半が高齢者のために使われている事実から目をそらしたかったのでしょう。

ここで社会保障4経費のうち年金、医療、介護に多くのお金が使われていることをなぜか書かれていますが、消費税増税の話をしているのだから、社会保障4経費の話にしちゃうのは少し筋悪な印象を与えます。

もし、消費税増税の使途が子どものために使われていないため不適切だといいたいなら、増税分の使途について議論を展開したいところです。例えば、2014年は増税分で5兆円も税収があったのに、子育て支援では3000億円しか使われていないということを指摘したほうが分かりやすい。物凄く今更ですが。

時事ドットコム:【図解・行政】消費税増税分の使途(2014年3月)

 

世代間対立を否定しつつ宮﨑駿の「年寄りからお金を回してほしい」を引用

そして最後の世代間対立について。

前の段落で高齢者にお金が使われすぎているという話になってしまい、世代間対立を煽るような流れになりそうだったので、それは不毛という話を展開しようとするも、

「高齢者VS若者・子ども」の対立構造も不毛。必要なのは、世代間協力

(中略)

「国が子どもたちに財源を使い、覚悟してゆとりある保育園を作ったら、日本はきっといい国になる。僕は年寄りの代表として(笑)、年寄りから子ども達にお金を回してほしいと思います」

 こういうふうに考える高齢者の方々と私達子育て世代が協力し、政治を動かし、税金の使い方を次世代優先に変えていくこと。それが、遠回りなようで、私達が働きやすい環境をつくる正攻法ではないでしょうか。

宮﨑駿さんの高齢者からお金を子どもに回して欲しいという言葉を紹介しちゃっています。ここでの協力は、結局は高齢者の年金、医療、介護を減らして、子どものために使いましょうということですよね。

でも、それはそう簡単に(宮﨑駿さんのような豊かな高齢者を除いて)全ての高齢者が協力できる話ではありません。この点については、Twitterで治部れんげさんに直接リプライされている方もいらっしゃいます。

結局、高齢者に対する社会保障費が大きすぎるとしてそれをカットしてしまうと、では、誰がその高齢者をケアするのかという話になり、子世代が金銭的に、肉体的に支援するという話になってしまいます。

既に、下流老人や介護疲れという言葉が最近よく使われているのは皆さんご存知の通りです。高齢者への社会保障費をカットしたせいで、子世代が介護疲れになり、共倒れしてしまっては元も子もありません。だから、高齢者の社会保障費というのは簡単に削減するという議論ができないのです。

 

締め

既に一度議論されているところを再度掘り返したり、ちょっと筋悪な論理展開をしているのに加え、何より、見出しやタイトルがモヤモヤを生んだように思います。

日経DUAL自体は大好きなメディアなのですが、Webメディアとしての限界はあるにせよ、せめて見出しをもう少し検討するなど、校正に時間をかけて頂けると嬉しいです。

なお、個人的には財源問題については、個人への資産課税が最有力ではないかと考えています。

 

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