東京医科大学の文科省からの助成と入学試験の不正について、東京医科大学が田辺総合法律事務所に依頼して作成された内部調査報告書が公表されていたので、ささっと読んでみました。
文部科学省大学支援事業と入学試験における不正問題に関する内部調査報告書の受領について | 東京医科大学
入試の不正の方法は色々あって、一次試験での特定の受験者への底上げと、二次試験の小論文(100点満点)での以下のような一律の加算が行われていたようです。
※内部調査報告書(p.22)より
企業でも3浪以上は採用しないという話がまことしやかに出回っていますが、それと類似することが入試でも行われていたわけですね。ただし、女子は浪人関係なく一律加算なし!
それで、東京医大での入試不正がどれくらい昔からあったかというと、
臼井氏が入試委員会のメンバーであった平成 8 年より後のころ、東京医大では、入試の合否判定に関する教授会では受験生の得点を開示せず、教授会以前に開催される入試委員会において、入試委員同士で協議をすることで合格者の調整を行っていたようである。(p.17)
少なくとも平成8年、1996年ぐらいからは入試不正は行われていたようです。そのことについてサンデー毎日に平成20年、2008年に入試の採点方法がおかしいことをスクープされ、文科省も問題視したため、採点方法を見直そうとしたんだけど、
その後の経緯は定かではないが、上記の確認事項に従って合否の判定を行うと、同窓生の子弟を合格させにくくなってしまったことから、正確な時期は不明であるが、その後の入試委員会において、二次試験の点数を調整するということが行われていた模様である。(p.18)
同窓生、つまりOBOGの子どもを合格させにくくなったことで、再度得点調整をするようになった。
これでも分かるように、東京医大のOBOGからのプレッシャーが得点調整の背景にはあったようで、この点は、内部調査報告書でも指摘されています。
(4) 同窓会からのプレッシャー
これらに加えて、東京医大では、同窓会から、同窓生の子弟の入学者数を増やすよう理事長や学長に対してプレッシャーがあった点も原因の一つではないかと思われる。すなわち、東京医大新聞の中で、同窓会から、同窓生の子弟の入学が困難であることや同点の場合には同窓生の子弟を優先して入学させることなどの要望が出されたこともあった。
東京医大においては、同窓生からの寄付金が財政上一定の割合を占めていたことから、経営基盤を固める上で、前記(1)ア及びイのとおり、同窓生からの寄付を期待して、その子弟の合格の依頼に応じざるを得なくなっていたことが不正の動機の一つとなっていた可能性がある。(p.36)
入試不正について、個人に起因するものに加えて、このような同窓生からのプレッシャー、その裏側には寄付金があったということからすれば分かりやすいですよね。同窓生からの寄付金の額の割合を調べると入試不正のインセンティブが働きやすい医大とそうでない医大を分けられそう。
ただ、分かりやすいだけに、再発防止は難しいそう。何しろ、寄付金が財政上重要な位置づけなら、入試不正を辞めるというのは寄付金が減るからということだし。
……と思って、東京医科大学の財政情報をチェックしてみたら、
教育活動での収入が900億円ぐらいあるうちの、寄付金収入は10億円ぐらいしかありませんでした。医大だけに85%ぐらいが医療収入。10億円は大きい金額だけど、これを握られていたからといって(大学のブランドが著しく既存する)入試不正をするという構造があったと言える額かと言えば、そこまで大きくない感じがします。
何にせよ、既に一度2008年にもやらかしていたことが発覚しているにも関わらず、今回改めて不正が発覚したわけで、どんな再発防止策を検討するかは、非常に興味深いところがあります。
他の大学でも(まともなところなら)今回の件を受けて自分たちも不正をしていないか調査し、(しでかしていたら)防止策を講じるでしょうから、来年の入試からは、特に医学部入試の合格結果(男女比率等)が大きく変わるかもしれません。このような状況下でも女性が例年同様に医大を志望するのであればですけど……。
不祥事続きの文科省にはぜひ長期的に入試不正を監視して頂きたいところです。