第一生命によるアンケート調査のニュースについて、
“男の子の将来の夢” 1位は15年ぶりに「学者・博士」 | NHKニュース
こんなTwitterコメントを見かけました。
男の子のなりたい職業で15年振りに「学者・博士」が1位になったってニュースで、「理由は日本人がノーベル賞を受賞したことか」とか言ってるけど絶対違うだろどう考えても天才物理学者桐生戦兎のおかげだぞ仮面ライダーしっかり見ろ
— もり (@LovenozoeLive) 2018年1月4日
現在放送されている仮面ライダーが物理学者だから、その影響で男の子が学者・博士になりたくなったのではないかという話です。
※右がビルド（物理学者）で左がエグゼイド（医者）
仮面ライダーの影響では、たぶん、ない
それだったら面白いですけど、まず、違いますね。というのも、タイミングの違いがあって。
最新の仮面ライダーである仮面ライダービルドが放映開始されたのは2017年9月3日（日）からですが、このアンケートの締切りは2017年9月4日（月）です。さすがに放映されて1日で学者・博士志望者が急増し、一気に応募するということはないでしょう。
夏休み子どもミニ作文コンクール - 子育て支援情報サービスかながわ
開催日 2017年07月03日(月)～2017年09月04日(月)
では、9月3日以前に、仮面ライダービルドの情報がまったくなかったかといえば、児童雑誌等での事前のネタバレは多少はありました。でも、天才物理学者という記号としての情報だけです。
テレ朝POST » 『仮面ライダービルド』放送決定！天才物理学者が2本のボトルを組み合わせ変身
映像としては、去年の夏に公開された仮面ライダーの映画で、仮面ライダービルドは一瞬登場しますが、物理学者らしいシーンはほとんどありません。前の仮面ライダーから能力を奪っているどちらかといえば悪役という感じ。
これらの影響で、男児が物理学者になりたくなったとするのは、ちょっと弱いでしょう。
仮面ライダーの影響だというのであれば、男子のランキングでお医者さんが前回より増加していたり、
女子のランキングで看護士さん、お医者さんが増加していることを指摘したほうが、
まだ説明がつく可能性はあると思います。（どちらの表も出所は第一生命『第 29 回｢大人になったらなりたいもの｣調査結果』より）仮面ライダービルドの前の仮面ライダーで、2017年8月まで放映されていた仮面ライダーエグゼイドでは医師と看護師が登場しましたからね。
ちなみに、第一生命は、2014年の調査で女子のランキングに歌手・タレント・芸人が入ったことをアイカツの影響としていたり、
※画像は第 26 回｢大人になったらなりたいもの｣から
2016年の調査ではプリパラの影響に触れていたりと、
※画像は第 27 回｢大人になったらなりたいもの｣から
児童のトレンドはそれなりに認識しています。ノーベル賞以外も観測範囲にあります。
と、ここまで書きましたけど、私はこのアンケート調査でもって一般論として何かを語ることは、ほとんど意味がないと考えています。なぜなら標本の抽出方法が不適切だからです。
第一生命が選んだ子どもが「大人になったらなりたいもの」
先ほどのNHKニュースでは、第一生命が1100人分を抽出し、分析したとあります。
“男の子の将来の夢” 1位は15年ぶりに「学者・博士」 | NHKニュース
このアンケート調査は、大手生命保険会社の第一生命が全国の保育園・幼稚園児と小学生を対象に毎年行っているもので、ことしは７月から９月にかけて寄せられた回答のうち１１００人分を分析しました。
どうやって1,100人を抽出したかというと、
第一生命『第 29 回｢大人になったらなりたいもの｣調査結果』
第一生命保険株式会社(社長：稲垣精二)では、全国の幼児・児童（保育園・幼稚園児及び小学校１～６年生）を対象に「夏休みこどもミニ作文コンクール」を実施しました。
応募用紙は第一生命の生涯設計デザイナーが配布・回収し、今年度は全国の約７万５千人のお子さまから応募が寄せられ、応募作品の中から 1,100 点の優秀作品を選出しました。応募用紙に「大人になったらなりたいもの」アンケート記入欄を設けており、この 1,100 点のアンケートを都道府県別、男女別、学年別に集計・分析しました。
まず、夏休みこどもミニ作文コンクールの応募用紙を第一生命の生涯設計デザイナー（つまり保険外交員）が配ります。それに応募した児童が7.5万人で、優秀作品を1,100点選出。その優秀作品の「大人になったらなりたいもの」欄を集計・分析したのが今回の結果ということです。
この抽出方法だと、このアンケートの結果は使えないと思いますよね。
色々問題がありますが、まず、第一生命の保険外交員がアンケート用紙を配っているわけで、第一生命の保険を購入している親の子どもが基本的に回答していると考えられる点。次に、その回答者のうち、ミニ作文で優秀作品に選ばれた子ども1,100人をサンプルとしている点。サンプルが相当偏っていますよね。
要するに、このアンケート結果は、第一生命（及び共同主催の朝日新聞）が選んだ子どもの「大人になったらなりたいもの」だということです。ランダム抽出とどれくらい差があるか（ないのか）を示してくれないと、このままでは一般的な子どもが「大人になったらなりたいもの」としては使えません。
ちなみに、第28 回、第27回、第26回とそれ以前のアンケートでの対象者の抽出方法を読むと、
応募用紙は第一生命の生涯設計デザイナーが配布・回収し、今年度は、全国の約●万●千人のお子さまから応募が寄せられました。このうち都道府県別、男女別、学年別に抽出した 1,100 点の内容を集計・分析しました。
とあり、優秀作品を選出という文言は触れていません。
もしかしたら、2017年度の第29回だけ特殊な抽出方法をしたのかもしれず、その結果、男子のサッカー選手が急減し、学者・博士が1位になった可能性があります。
締め
この第一生命のアンケート結果では、男子と女子の「大人になったらなりたいもの」がかなり違う傾向が出てきます。
これについて、男子と女子とで小さな頃から生まれつきなりたいものが違うとか、子育てをする中でのジェンダーバイアスの影響があるのではとか、色々議論したくなりますよね。でも、元々、第一生命（と共同主催の朝日新聞）が作文ベースで選んだ児童が標本ですから、会社として男子らしさや女子らしさのバイアスがかかっているだけという可能性もあります。
第一生命としては、恐らくは、保険外交員によるセールスツールとして、用紙の配布と回収時に顧客と接点を持つためにやり始めたもので、今更、抽出方法等の変更を検討できないでしょう。できれば、マスコミが報道する際は、アンケートの偏りに触れてもらえるといいんじゃないかと思う次第です。
以上、本題です。以下、仮面ライダーについての余談です。
余談
みなさんは、昨年の冬から上映されている『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』をご覧になられましたか？
私は、仮面ライダー鎧武（の終わり）から見始めたにわか仮面ライダーファンなんですが、鎧武をきっかけにしてオーズもフォーゼも見ていたので、とても楽しんで見ることができました。
特にオーズの火野映司とアンクの絡みが良かったんですけど、相変わらず火野映司が放浪者っぽかったのをちょっと心配して見てました。最近の仮面ライダーは、警察官に、寺の跡取り息子に、医者に、物理学者と、堅い職業できているので、余計にそう思ったかもしれませんね。
